セルトーヘンボス('s-Hertogenbosch)ヒエロニムス・ボス美術館、聖ヤン教会、北ブラバント博物館

こんにちは。トオ子 です。

ヒエロニムス・ボス・アートセンターを目指してセルトーヘンボスへ行ってきました。ヒエロニムス・ボスが描くシュールな世界観は意外にも500年もの昔に描かれたものでした。近代アートに通じるものがあり、その影響力を改めて感じました。

デビルメーカーと言われたヒエロニムス・ボスの絵を堪能したあとは、聖ヤン教会、北ブラバント博物館、市の町並みを見学し、名物のボッシュ・ボルをほおばってきました。

思い出保存と情報共有を兼ねて旅行記を綴ります。

適宜、読み飛ばしてくださいね。

本編…汎用的な情報 | …歴史のこぼれ話 | …個人的な感想文 | …行き方や公式サイトの案内

ヒエロニムス・ボス美術館[Jheronimus Bosch Art Center]

ヒエロニムス・ボス美術館正面

この美術館は2007年にオープンしました。もと教会だった建物を利用してヒエロニムス・ボスの傑作および関連作を展示しています。

ヒエロニムス・ボスは15世紀の画家です。セルトーヘンボスで生まれ育ちました。

まるで小さなテーマパーク
写真撮影もOK!

館内は写真撮影OKです。三連祭壇画なども開閉自由です。何故なら「展示品はレプリカだから」です。

オリジナル(原画)は世界各国の美術館に散って所蔵されています。それらは写真撮影も出来ませんし、額縁に触れることも出来ません。でもこの美術館なら写真を撮り放題!…です。

展示品はオリジナルと同じサイズです。額縁もオリジナルと同じ仕様です。

展示品はヒエロニムス・ボス関連の油彩画29点線描38点、加えて市の現代美術作品が数点です。受付で貰える冊子に各作品の解説が書かれています(蘭語/英語、他)。冊子は持ち帰れます。

作品に描かれたシュールな生き物が立体になって天井から吊るされています。

地下室とタワーも見逃さないで

地下室
らくがき

地下には15世紀のアトリエが再現されていて、ヒエロニムス・ボスらしき人物がキャンバスに向かっています。制作過程がわかる下絵も並べられています。窓(を模した壁)から見える外の景色(絵)はマルクト広場。外から聞こえる牛の声や生活騒音も再現されていました。

お絵かきコーナーも設けられています。記念にラクガキを一枚、残してきました。

タワーからの眺め

タワーからは街を一望できます。教会の塔によくある螺旋階段ではなく、ここはエレベーターでスイっと登ることができます。聖ヤン教会の美しいフライングバットレスがはっきりと見えます。ガラス張りになっていて、バルコニーに出られないのだけがちょっと残念。そのぶん高所恐怖の人には優しいタワーです。

天文時計「最後の審判」も楽しみたい

館内でカラクリ時計を見ることができます。

Astronomisch kunstuurwerk in het Jheronimus Bosch Art Center
Jheronimus Bosch Art Center

1時間毎にカラクリが動き出します。キリスト誕生のシーンに続いて、「最後の審判」が始まります。「最後の審判」で仕分けされる人たち、とくに地獄行の人の…後姿が、なかなか切ないです。

この天文時計のオリジナルは、かつて聖ヤン教会にありました。1513年に設置され、しかし1584年の火災で焼失してしまいました。本物の天文時計の断片が、今も聖ヤン教会(おそらく付属博物館?)に遺っているそうです。

ヒエロニムス・ボスは500年前の画家

ヒエロニムス・ボスは15世紀の画家です。いまから500年も昔です。500年前と言えばルネサンス期です。

昨日、ライデンのラーケンハル博物館で北方ルネサンスの宗教画を見ました。いわれてみれば、細かい描き込みという点では共通している気がします。

でも人間や動植物の描写は独特です。ヒエロニムス・ボスは「デビル・メーカー」の異名をとりました。彼が描くモンスターは、一般的なイメージからかけ離れたシュールさがあります。独創性に富んでいます。

ヒエロニムス・ボスの絵は王侯貴族からもてはやされました。ヒエロニムス・ボスは画家として成功し、地位も名誉も得ています。むしろ他の画家に影響さえ与え、似たような作品が制作されました。後世の画家にも影響を与えています。

16世紀の聖画像破壊運動のあおりを受けて、ヒエロニムス・ボスのほとんどの作品が紛失しています。Wikipedia(Ja)に拠れば、わずか30点ほどの作品が遺されているのみだそうです。

そのうち10点もの傑作がスペインのプラド美術館の所蔵ということです。これはスペイン国王フェリペ2世(1527-1598)がヒエロニムス・ボスの絵画の愛好家だったためです。

このアートセンターに展示されている作品の中から、プラド美術館所蔵の作品を探してみると、6点が該当しました。あれ?10点に及ばないですね。…あと4点は何でしょう?

快楽の園(The Garden of Earthly Delights)

ヒエロニムス・ボスの作品の中でもとくに有名なもののひとつに三連祭壇画「快楽の園(The Garden of Earthly Delights)」があります。向かって左のパネルに「エデンの園」中央に「快楽の園」右のパネルに「地獄」が描かれています。

Wikipedia(Ja)に拠れば、この絵の主題についてはさまざまな解釈があるとのこと。

中央パネルが好色の罪を表し、その罪を犯した者が右パネルの地獄図で罰せられているとするのが、最も一般的な説であるが、ボスが『阿呆船』を題材とした他の作品『狂人船』では教会勢力を痛烈に批判していることと併せ、この絵はアダム教或いはアダム主義と言われる異端の描写であり、地獄図で拷問されているのは騎士、僧侶などアダム主義の密儀を否定する教会勢力とする説もある。

Wikipedia(2019-10-30)

歴史:ヒエロニムス・ボスの生涯

ヒエロニムス・ボスは画家一族の家系に生まれました。生誕地はここセルトーヘンボス。生年は1450年頃だろうと憶測されています。祖父、父、叔父、兄弟が揃って画家でした。

祖父がアーヘン(現ドイツ)出身だったのでアーヘン一家と呼ばれました。一家はアトリエ(工房)を持ち、家族や弟子と共に制作にあたっていました。ヒエロニムス・ボスは作品に、ボス(Bosch)とサインしました。市の名称です。

顧客は王侯貴族や聖母教会のメンバーシップでした。彼は瞬く間に有名になり、地位も向上しました。上流階級の女性と結婚し、子供がないまま、1516年に亡くなっています。

彼の生涯と作品について知っておきたい人に、次のWebページをお薦めします。

  外部リンク  ヒエロニムス・ボスの生涯と代表作品(1) フランドル派の異端児ボスの人生と絵画一覧
名画を理解するための情報を提供してくれるサイトです。ヒエロニムス・ボスについて時代背景や生い立ち、鑑賞ポイントをわかりやく解説してくれています。

ヒエロニムス・ボスのサイン

旅行インフォメーション

ヒエロニムス・ボス美術館
Jheronimus Bosch Art Center

Jeroen Boschplein 2, 5211 ML 's-Hertogenboschhttps://g.page/Jhe...nter?share
公式ウェブサイトhttp://www.jheroni...center.nl/  

セルトーヘンボス(デンボッシュ)の街並み[Den Bosch]

セルトーヘンボスの街並み

町並みが綺麗です。小雨が降っていました。秋だからなのか、平日だからなのか、雨が降っているからなのか、このときは哀愁がありました。

マルクト広場

マルクト広場
マルクト広場
マルクト広場のボッシュ像
井戸

マルクト広場は三角形で、視界に飛び込む建物群の遠近が美しいです。中央に井戸があります。井戸は使われていませんが、側面に飲用水の蛇口がついていました。

シティホール
ツーリストオフィス

シティホールは1670年築。ガイド付きツアーに申し込めば内部の見学が可能です。建物正面に「1944」という数字が書かれていました。ナチスからの解放の年だと思います。2019年の今年はナチスからの解放75周年に当たります。

モンスターが点在

面白いのは、ヒエロニムス・ボスが描いたモンスターが立体になって、街に点在していることです。たまたま3体を見つけました。運河のクルーズ船に乗ると、もっとたくさんのモンスターを見ることができそうです。

徒歩で散策できる大きさの街だと思いますが、観光案内所の情報によれば自転車の貸出が無料らしいです。

旅行インフォメーション

セルトーヘンボス(デンボッシュ)の街並み
Den Bosch

's-Hertogenboschhttps://goo.gl/map...Ks7nAAoPRA
'Markt 77, 5211 JX 's-Hertogenboschhttps://goo.gl/map...qUrQpumLb9
ツーリストインフォhttps://www.visitdenbosch.nl/  

聖ヤン教会[De Sint-Janskathedraal]

ヒエロニムス・ボス美術館から見える聖ヤン教会

聖ヤン教会の建設が始まったのは1220年です。当初は市壁の外にあり、小教区の教会でしかありませんでした。1318年の市壁拡張によってはじめて市壁の内側におさまります。

聖ヤン教会は、現在はカトリック教会堂ですが、1629年から1815年まではプロテスタント教会堂として使われました。

宗教改革の時代、オランダの多くの都市でプロテスタントが優勢になりました。しかし、ここセルトーヘンボスではカトリックが優勢でした。

セルトーヘンボスは、八十年戦争でスペイン側につきますが、反乱軍に陥落されて、以後はオランダとして歴史を歩みます。

歴史:八十年戦争でスペイン側についたセルトーヘンボス

16世紀、ルターやカルヴァンに始まる宗教改革運動が各地で激しくなった時代のことです。当時、ネーデルラント(現・オランダ、ベルギー、ルクセンブルク)はスペインの支配下にありました。スペインはカトリック教国でした。

ネーデルラント北部の都市の多くはプロテスタント派が優勢でしたが、セルトーヘンボス市ではカトリック派が多数を占めていました。

この時期、スペインの圧政と宗教弾圧に耐えかねたネーデルラント諸州が反乱を起こします。政治と宗教が絡んだこの反乱は、八十年戦争に発展しました。この結果、反乱州が「オランダ共和国」として独立します(1648年)。

さてセルトーヘンボス市ですが、この戦争においてスペイン側に就いていました。昨日訪れたライデンとは逆の立場だったのです。

1629年、セルトーヘンボス市は反乱軍に落とされました。

オランダ共和国の独立が国際的に承認されたとき、セルトーヘンボスはオランダの手中にあったので、以来オランダとして歴史を歩むことになりました。

聖ヤン教会は、陥落の年から1815年まで、プロテスタント派の教会として使われました。

1810年には、オランダ*がフランスに組み込まれて一時消滅します。フランス皇帝ナポレオンは「聖ヤン教会をカトリック派に返還する」と約束しました。しかし果たせないままプロイセン(ドイツ)に敗れて、うやむやになりました。

1815年にオランダが王国として復活します。初代国王ウィレム1世は、聖ヤン教会をカトリック派に返還することに同意し署名しました。聖ヤン教会は約180年ぶりに、カトリック派の教会となり現在に至ります。

*オランダ…当時の正式名称は「ホラント王国」。フランス革命の余波を受けて、オランダも揺れていた時代。くわしくは⇒オランダの変遷ざっくり

携帯電話を持つ天使の像

「携帯電話を持ってる天使の像があるらしい。」

聖ヤン教会の両側に伸びるフライング・バットレスには、計96の像が設置されています。この中に、携帯電話を持つ天使が潜んでいます。

見つけるのは至難の業…!と思ったら、教会で購入したパンフレット(€1.50)に、そのエンジェルの所在が載っていました。

エンジェルはジーンズを履いています。携帯電話のボタンはひとつだけ。神様への直通ダイヤルとのことです。Wikipedia(en)によれば、ジェットパックを背負ったエンジェルの案もあったけれど、こちらは却下されたとのことです。

豆の壺をひっくり返す男

教会の外壁の装飾に「豆壺をひっくり返す男」のレリーフがあります。この男は建設現場の監督でした。妻から手渡された弁当が「豆」だったので、怒って入れ物をひっくり返した…というシーンを描いています。

この寓話の教えは「どんな食事や物にも感謝を」です。この寓話は18世紀に広まり、レリーフは19世紀に加えられたものだそうです。

日記:豆って栄養あるのに

寓話の詳細がわかりません。奥さんがなぜ豆を持たせたのか、豆はどんな位置づけなのか、気になります。寓話の教えから察するに、豆は粗末な食材の代表なのでしょうか。豆は栄養価が高く、価格もわりと高いんですけどね、昨今のスーパーマーケットでは…。

旅行インフォメーション

聖ヤン教会
De Sint-Janskathedraal

Torenstraat 16, 5211 KK 's-Hertogenboschhttps://goo.gl/map...tP4DssFMd6
公式ウェブサイトhttps://www.sint-jan.nl/  

北ブラバント美術館[Het Noordbrabants Museum]

北ブラバント美術館

常設展ではセルトーヘンボス市の歴史にまつわる展示を見ることができます。1400年〜現代までの絵画や機械や商品が陳列されています。

ヒエロニムス・ボスにまつわる作品の展示

ヒエロニムス・ボス関連の原画が見られるコーナーもあります。弟子による作品、判別が難しい作品が展示されています。

いずれも、先に訪れた「ヒエロニムス・ボス美術館」では見かけなかった作品です。数は少ないですが、原画ということで見応えはあります。

ヒエロニムス・ボスの没後500年にあたる2016年に、大規模な特別企画展が開催されていたようです。3年前か…惜しい。

特別展の最新情報は公式ウェブサイトで

期間ごとに特別展の催しがあります。私たちが訪れたときは「Van Gogh’s Inner Circle」という特別展が開催されていました。

ヴィンセント・ファン・ゴッホが描いた油彩画、線描、スケッチブック、手紙が展示されていました。ゴッホの交友関係や内面がうかがえる企画でした。

日記:館内で迷子になる

北ブラバント博物館。私たちが訪れた日は特別展も開催されていました。でも見たかったのは「常設展」です。館内で迷子になった私たちを係員さんは「特別展」に案内してくれました。このため本命の「常設展」を閉館まぎわに駆け足で巡ったことは思い出深いです。今後のために覚えておきたい英単語は次の2点:

  • 常設展…Permanent exhibition(パーマネントエキシビジョン)
  • 特別展…Temporary exhibition(テンポラリーエキシビジョン)

係員さんに道案内をしてもらうときは、何を見たいのか正しく伝えなきゃ💡

旅行インフォメーション

北ブラバント美術館
Het Noordbrabants Museum

Verwersstraat 41, 5211 HT 's-Hertogenboschhttps://goo.gl/map...8gqsFyCyB7
公式ウェブサイトhttps://www.hetnoo...museum.nl/  

名物ボッシュ・ボル

名物 ボッシュ・ボル

セルトーヘンボスの名物お菓子、ボッシュ・ボル。街中のいろんなカフェやベーカリーで見かけます。一見するとチョコレート掛けシュークリームですが、そのサイズは直径12センチと巨大です。特筆すべきは、ぎっしり詰められた生クリームです。生クリーム好きの人を限りなく幸せにしてくれるお菓子です。

店舗によって少しづつ味が違うらしいです。

元祖と呼ばれるお店は、ヤン・デ・グロート(Jan de Groot)。本店で購入できるほか、街中のカフェでもいただくことができます。カフェの外に ヤン・デ・グロート(Jan de Groot) の看板があれば、そのお店で仕入れているはずなので、在庫があるか確認してから着席すると良さそうです。

日記:Royal bakery

私たちは「Royal bakery」というお店のボッシュボルを購入しました。このお店の生クリームは軽い口当たり。甘くない、それがよい。パクパク進んでペロリとお腹に入ってしまいました。

ボッシュ・ボルはご当地シンボルとしてキーホルダーなどのグッズにもなっていました。でもこれが「たこ焼き」に見えてしまう私たちでした。

ボッシュ・ボルの楽しみ方

カフェに入ると、ボッシュ・ボルはナイフとフォークとともに供されます。コーヒーと一緒にいただくのが定番のようです。

もし屋外でシュークリームのようにかぶりつく場合は、チョコレートで コーティングされた面を下にすると良いです。シュークリームがあふれ出にくく食べやすくなります。伝統的には手で食べるお菓子だったそうです。

 旅行インフォメーション

本家 ヤン・デ・グロート
Jan de Groot

Stationsweg 24, 5211 TW 's-Hertogenboschhttps://goo.gl/map...ivGgfWe2z8
公式ウェブサイトhttps://www.bosschebollen.nl/  

ロイヤル・ベイカリー
Royal bakery

s, 44, Visstraat, 5211 WX 's-Hertogenboschhttps://goo.gl/map...DxNpRmt8c7
公式ウェブサイトhttp://www.bakkerijroyal.nl/  

概要

本日の行程

2019年10月金曜日 天気:雨時々くもり 気温:寒い

時刻内容
09:08 - 10:49アムステルダム駅(Amsterdam Centraal)
[鉄道]NS Intercity direct
セルトーヘンボス駅('s-Hertogenbosch)
[散策]
12:10 - 13:40[昼食]
[散策]
18:12 - 19:52セルトーヘンボス駅('s-Hertogenbosch)
[鉄道]NS Intercity direct
アムステルダム駅(Amsterdam Centraal)

地図

旅した国と地域

国:オランダ
地方 / 州:北ブラバント州
市町村:セルトーヘンボス